話題の生姜紅茶

96年度決算から一部行われるようになった責任準備金の算出に関するさらなる情報開示が重要である。
なお、時価情報の開示は、会計制度のグローバル・スタンダードとしての金融資産、デリパティブなどの時価会計への対応の第一歩でもある。 生命保険会社の公共債トレーディング勘定については、97年6月の保険審議会報告にもとづき銀行と同様、時価会計を採用する方針が示されている。
商品販売情報についても、顧客の生活保障ニーズに的確に対応した商品・サービスを勧めるという観点から、比較可能情報を含む適切な情報提供を通して、顧客が納得して自ら購入の意思決定(インフォームド・デシジョン・メーキング)を行いうるようにしなければならない。 インターネットのホームページ上で、アメリカ最大の生命保険会社PのR会長が「顧客は、われわれが彼らのために意思決定するのではなく、彼らが自ら意思決定するのを手助けすることを必要としている」と述べているのが印象的である。
イギリスでは、金融サービス法にもとづく自主規制機関(PIA)が公正取引庁(OFT)との連携のもとに販売時の商品情報開示について詳細な規制(開示すべき事項と方法を規定)を加えているが、96年からはブローカーのみならず一社専属のエージェントのコミッション開示をも要求し、業界に衝撃を与えている(わが国政府においても、イギリスの金融サービス法を参考に、個人向け金融(投資)商品に関する情報開示や不公正取引を規制する法律を制定するとの構想も出されているが、イギリスと同様に生命保険商品についても具体的な情報開示のルールの制定が望まれる)。 同様に生命保険商品の募集時の情報開示義務を比較情報を含めて定めてきたアメリカでは、80年代末から90年代にかけての不正販売を契機に、95年12月に全米保険監督官協会(NAIC)が、契約者配当等の契約時に保証されていない保険価額の見込み表示(例示)に関する生命保険例示モデル規則を制定し、厳しいガイドラインを設けている。
両国の方式にも種々問題点が指摘されており、わが国固有のインフラとの整合性をとりつつ導入することはかなり困難ではあるが、規制緩和を進め顧客に自己責任を求める以上、その基盤としての比較可能な会社の健全性および商品情報の開示が不可欠である。 もっとも、募集時の商品内容の比較情報については技術的に困難な面があり、個別保険会社(の募集人)に他社商品との比較情報の正確な開示を求めることが現段階では難しいことも事実である。
しかし、自由化が進み競争が促進されていくならば、自社の商品・サービスについてわかりやすい適切な情報を提供しない会社は淘汰されていくであろう。 その際のフェアなルールをどのように設定するかについて、英・米では官民あげて10年以上も前から、それこそ血の棲むような努力をし研究を続けていることを忘れるべきではないと思う。
以上述べたように、経営内容と商品の情報開示の充実が急がれるが、わが国では、生命保険会社の経営内容の情報開示がかえってパンク・ラン的な取付けを誘導し、秩序破壊につながる、との反論があるかもしれない。 ソルベンシー・マージン基準の開示についても、現在の情勢下では慎重に進めなければ、まがりなりにも健全性を維持している会社を破綻に追い込む危険性を有していることは否定できない。

しかし、もしそのような状況にあるとすれば、いたずらな事態の引き延ばしはかえって傷を大きくし、生活保障、金融仲介という生命保険業の本来の社会的役割の発揮を不可能にする。 場合によっては公的資金の導入を含めて、一刻も早くバブル時のツケを清算し、フェア、フリー、グローバルな競争をなしうる環境を整備することが必要と考える。
あわせて、92年の保険審議会答申が指摘するように、中立的立場で商品の比較情報の開示を行う第三者機関や格付け機関の育成・強化も急務と思われる。 前述したような、生命保険業界を取り巻く外部環境と内在的要因に対して、生命保険業界は21世紀に向けてどのようなスタンスで課題を解決していけばよいのだろうか。
具体的な対応策については「2」以下で述べることとするが、大手生命保険会社も中小命保険会社も今一度自己を見つめなおし、21世紀を展望したビジョンあるいは使命(ミッション)を描くこと、そしてそのビジョンに沿って、限られた資本、人材などの経営資源を持続可能な成長と利潤をもたらしうる自己の競争優位を保持しうる戦略ドメイン(コア・ビジネス)に集中的に投下することが先ず求められる。 では戦略ドメインとは何か。
いかなる企業にとっても競争優位を保持しうる市場と商品を持ち、資本などの経営資源を重点的に投下しうる事業分野を確保しなければ、持続可能な将来の成長と利益の確保はありえない。 この事業分野が戦略ドメインなのである。
戦略ドメインはもとより個々の会社によって異なる。 アメリカの生命保険会社でも、大手の会社では、戦略ドメインを、個人(家計)への生・損保からミューチュアル・ファンド(投資信託)、消費者ローンを含む総合保険・金融商品の提供、企業・団体向けの生命・健康保険(HMOなどの定額前払制の医療供給システムであるマネジド・ケアを含む)の提供、年金基金をはじめ企業・団体向けの資産管理(子会社による投資管理・顧問から企業年金の事務管理を含む)に絞るところが多い。
もっとも、大手といえどもこれら全てを取り扱うのではなく、競争優位部門を見極めつつメリハリをつけ、たとえば損保険部門や健康保険関連事業は大幅に縮小するなどの戦略も採られている。 他方、中小生保にあっては、競争優位の市場への資本やその他の経営資源の集中をより強化している(もっとも、中小会社はすべての会社がM&Aの標的といわれるほど蛾烈な競争が展開されている)。
わが国においても、大手会社は、高齢化、国際化そして情報通信革新の潮流のなかで、改めて自己の経営資源を見つめ直し、金融ビッグパンや社会保障制度改革をにらんだ21世紀戦略を樹立しなければならない。 また、中小会社にあっては、護送船団行政の下でその傾向が強かった大手追随型経営ではなく、一部優れた会社が採ってきた、商品やチャネルに独自の工夫をこらした特化型経営を追求することが求められている。
ただ、ビジョンを描き戦略ドメインを定めるだけでは状況は何も変わらない。 自らのドメインを確立した生命保険会社はそのビジョンの実現に向けて、新たな事業の再構築、単なるリストラではなく本格的な事業の再構築)に取り組まなければならない。
競争優位の商品、販売チャネル、ALM・財務管理(収益・コスト管理)、人事やコンピュータ・システムの再構築そして企業文化の革新が全社一丸となって目指されなければならない。 場合によっては、相互会社から株式会社への組織変更による経営の選択肢の拡大から、さらには他の会社の傘下に入って生き延びる戦略も必要かもしれない。

いずれにしても、戦後の混乱期以後、経営トップの舵取りが今日ほど間われる時期はなかったといえるであろう。

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